ベトナム旅行記 有澤総合病院 院長 柴原 伸久
3回目のハノイ・バックマイ病院への訪問(2007年8月23日~26日)
私はハノイ・バックマイ病院で2004年8月と2006年3月に内シャント手術のデモンストレーションを行ってきましたが、今回はNPO法人いつでもどこでも血液浄化インターナショナルのメンバーとして2007年8月24日にバックマイ病院の腎内科へ個人用透析装置(DBB-26, 日機装)2台を寄贈してきました。
ベトナムは日本の8割の面積で、人口は約8,300万人、一人あたりのGDPは636米ドル(2005年統計、2006年版IMF資料)、経済成長率は8.17%(2006年)でまさに成長過程にある国です。親日家が多いことと労働力が安価なことより最近では日系企業のベトナム進出が目立ちます。ちなみにベトナムの人が外資系企業で働く場合の給与は$500/月くらいで、国内企業では$200/月くらいです。3度目のハノイの印象は車が多くなり路上駐車が増えたこと、女性が色白になり、茶髪が増えアオザイを着る方が少なくなったこと街灯が増えたことでした。
バックマイ病院はハノイにある厚生省系の2000床の病院でハノイ大の関連病院でもあります。私は今まで透析科でシャント手術のデモンストレーションを行ってきましたが、今回初めて腎内科に訪れました。腎内科の科長のDr. Dinh Thi Kim Dung (Dr ズン)に伺いますと入院ベッドが50床で、腎内科医14名、外来患者10,000人/年、入院患者1,200人/年でした。しかも、1ベッドは1人の患者のものではなく、男性で3人、女性では4人がベッド・シェアしていて、床には家族が泊まり込んでいました。
透析科ではなく腎内科へ個人用透析装置(DBB-26, 日機装)2台を寄贈したのは、透析科には装置が50台あり資金も潤沢なこと、腎内科には装置はなく透析科の都合で深夜1時とか2時にアンビューをもみながら道路を渡って透析棟へ患者搬送しなくてはならないこと(12-20人/日)、Dr ズンが非常にまじめな女性であることからでした。
寄贈パーティーはDr Tran Thuy Hanh(Drハン、バックマイ病院院長、女性)、Dr Ngo Quy Chau(Drチャオ、バックマイ病院副院長、呼吸器内科、SARSの発生時に活躍)、Dr Do Thi Lieu(Drリオウ、ハノイ大内科部長)に加え在ベトナム日本大使館の一等書記官兼医務官の水野泰孝先生にも出席していただけました。パーティーには30人くらいが集まり自己紹介と意見交換のあと、DBB-26(日機装)2台の寄贈、腎内科病棟と透析病棟の見学が行われました。(2007年8月24日)
ベトナムの透析事情、腎内科の置かれている状況のついて簡単にまとめます。
7万7千人が透析を必要としているが実際に治療を受けているのは2500人ほど。
所得があり保険をもっている人の透析費用は国負担$30/回 自己負担なし(60%)
所得がなく保険をもっていない人の透析費用は国負担$22/回 自己負担なし(40%)
ダイアライザーや回路の再利用は4-8回と説明は受けたが、低所得者の場合はダイアライザーが裂けたり、回路がちぎれるまで再利用しているらしい
6クール/日
QB 350ml/分
最大3.5時間透析
血液検査4回/年
胸部レントゲン撮影は定期には行わない(肺炎や心不全が起こってから撮影する)
死亡原因 ①感染②貧血
エリスロポエチン、Vit D製剤、炭酸カルシウム製剤は別料金
腎内科の事情
腎炎、急性腎不全、透析導入、維持透析の管理、腎移植、CAPDを担当
透析装置は持っておらず、透析が必要な患者を腎内科の病棟から透析科の別棟に道路を渡って搬送する(1日に12-20人)
費用は国負担$500/月自己負担なし(2004年11月から保険適応)バッグ交換は4回/日2004年11月以降に導入した患者数は180人、現在患者数は130人バクスターが独占
今回の寄贈は腎内科のみならず、バックマイ病院全体で歓迎していただき、昼食会や 夕食会での楽しいひと時も過ごせました。
最後に今後のベトナム支援については腎内科の透析室にはあと6台の個人用透析装置 が設置可能ですので、日機装と協力のもと援助を続けてゆきたいと考えています。また、在日ベトナム大使館と共同で在ベトナム日本大使館の草の根無償にも申請する予定にしています。